高士 士大夫のメタファー、そして 亦復一樂帖。
朝の空気をはらって、露を含んだ清らかな香りが、目覚めたばかりの体にも生気を注ぎます。
今年も春蘭の花の季節を迎えました。
膝を容れるように、顔を近づけて知る春蘭の香りは、玉露の佳品を楽しむような瞬間。
詩や水墨画では、四君子として、蘭 竹 梅 菊 を モティーフにします。
それぞれに高士 士大夫としての徳を象徴するメタファー。
山野を散策していて ふと出会う蘭には、清貧に生きる学者の姿を感じます。
唐代以前の蘭は、秋蘭として神聖な藤袴を指しているよう。
このことを知り、屈原「 離騒 」の一文をやっと納得できました。
「 余 既 滋 蘭 之 九 畹 」
(私は蘭を既に36畝も育てている)
それでもやはり、文人にとって、蘭は欠くことのできないモティーフ。
江戸時代の田能村竹田の描いた「亦復一樂帖」の第十一図にも、蘭と竹が描かれています。
跋文を依頼された、頼山陽が跋後に一文を添えて我物としてしまった程の、愛すべき一画冊。
跋文を依頼された、頼山陽が跋後に一文を添えて我物としてしまった程の、愛すべき一画冊。
大正期に作成された複製画冊を、私も二十年程前に求めて 愛蔵しております。
書斎でこの冊を開くのも、亦、一楽と言うべきでしょう。