初春の玉箒 揺らぐ玉の緒
あけましておめでとうございます。
皆様、美しい初春の この朝をお過ごしのことと存じます。
本年がどうぞ、佳い年でありますことを。
はつはるの はつねのけふの たまははき てにとるからに ゆらくたまのを
万葉集 巻二十 家持 歌
揺れては奏でる かそけき玉の緒の音。
古来、初春には、皇后自ら 国の栄えの養蚕の為、蚕室に捧げたという玉箒。
初子の日の宮中で玉箒を下賜された、歌人の心も高揚したことでしょう。
未生流 西村陽甫先生が
今日 この年の初めにと
松を生けてくださいました。
青 松 勁 挺 姿 凌 霄 耻 屈 盤
青々と輝く松の翠に、逞しくうねる青龍の背を見ているよう。
店内の空間を清浄に祓って頂ける、幾世変わらぬ 松樹の翠。
吉相に祈って、七五三の型に生けてくださいました。
未生流の相生結び。
おめでたい和合のしるし。
松が枝の出づる 若芽の美しさ。
歳毎に斉しく継いで
おおしくありたいもの。
いつも、楚として、凜としていらっしゃる
未生流 西村陽甫先生。
先生のお花には
純粋な生命力に溢れる姿を感じます。
さっと生けてらっしゃる 無駄のないその所作
そして、花と相対する そのお姿を
同じ空間で拝見する、私の無二のひととき。
先生が、お家元での展覧会のために
お友達と作られた、花器のおひとつ。
未生流の御家紋とのこと。
先生の大切な想い出のお品。
お客様の田中様より頂きました、
お手作りの繭玉を青竹、青柳に飾っております。
ひとつ、ひとつ異なる絹の古布を呼び継いで
愛しみつつ作ってくださりました。
歌人の得たという玉石飾りの緒の如く
初春の新しい風の吹きこむ毎に
蚕の糸より作られた こちらの玉の緒も、さやさやと揺れ動きます。
「 いやしけよごと 」 と かそけく奏でるように。